制御弁が全閉でも流量が止まらない — シートリークの見分け方とトリム交換の判断

全閉指令を出しているのに、下流の流量がゼロまで落ちない。この症状で最初に分けるのは、弁棒まわりから外へ出ている外部漏れなのか、弁の中を通り抜けている内部漏れなのかです。ここを飛ばして分解の相談に入ると、開けてから見当違いだったと分かります。

そして内部漏れと分かっても、まだシートリークと決まったわけではありません。シートは健全で、単に閉じきっていないだけ、という結末が現場では相当あります。分解の要否は、その二つを分けてから決まります。

外部漏れと内部漏れは、見えている現象が違う

グランドパッキンからの漏れは外に出るので目に入ります。蒸気系なら弁棒まわりの噴き、保温材の変色や濡れ、ボンネット下の滴下痕。ただしこれは、下流の流量が残る理由にはなりません。パッキンを増し締めしても、全閉時に通っている流量は変わらないのが普通です。

内部漏れは逆に、外からは何も見えません。手がかりは下流側の指示値です。全閉指令のあとも下流温度が下がらない、下流圧力が抜けない、流量計がゼロに落ちない。蒸気系であれば、閉止後に下流配管の表面温度が高いまま残るかどうかを、安全な位置から熱画像で確認できます。配管に近づいて手で触る必要はありません。

両方が同時に起きていることもあります。外に漏れているからといって、内部漏れの調査を止める理由にはなりません。工事の範囲も費用も別に立ちます。

内部漏れでも「シートが原因」とは限らない — 先に既存データで潰す

新しく何かを測る前に、すでに残っているデータで潰せる範囲があります。順番としてはこちらが先です。

まず DCS のトレンドで、制御出力と開度フィードバックを並べます。出力が 0% まで落ちているのに開度フィードバックが数%で止まっているなら、シートの問題ではありません。閉じきっていないだけです。

次に計装空気の供給圧力。レギュレータの二次圧が仕様を下回っていると、締切差圧に対する着座力が出ません。空気ヘッダの圧力は記録が残っていることが多いので、漏れが出はじめた時期と重ねて見ます。

ポジショナ側では、零点の設定と全閉強制の機能が生きているかを設定記録で確認します。整備のあとに設定が戻っていない例があります。ただし設定の変更は計装担当が単独でできる操作ではないので、運転側と合意したうえで行います。

そして、いちばん効く切り分けは隔離です。運転課に依頼して上流・下流のブロック弁を閉じ、それでも下流に流量が残るなら、その制御弁ではありません。バイパス弁のシートが通っていた、という結末は珍しくありません。

見えている症状先に見る既存データ示唆される所
全閉指令でも下流流量が残り、開度フィードバックが 0% まで落ちないDCS の制御出力と開度フィードバックのトレンド閉じきっていない。ポジショナ零点・空気源・アクチュエータ側
開度は 0% まで落ちているのに下流温度・圧力が抜けない閉止後の下流温度と圧力のトレンド内部漏れ。シート側の疑いが濃い
制御弁を隔離しても下流に流量が残る運転課に依頼したブロック弁閉止時の指示値バイパス弁または別系統からの回り込み
交換して数か月でまた漏れはじめる保全履歴の交換周期と前回の分解所見サイジングか流体条件。壊食が続いている

その弁は、どこまで止まる仕様だったのか

制御弁は遮断弁ではありません。金属シートの調節弁に遮断弁と同じ止まり方を求めても、仕様として出ないものは出ません。

止まり方の基準は ANSI/FCI 70-2リーククラスです。番号が上がるほど許容される漏れ量が小さくなり、試験を求めない区分から、最も厳しい区分まで段階が分かれています。金属シートで現実的に狙える範囲と、樹脂などのソフトシートで到達できる範囲は同じではありません。発注仕様書に要求クラスが書かれていない案件は多く、その場合は「漏れている」と言っても合否の基準がそもそもありません。

もう一つは締切差圧です。運転差圧ではなく、締め切った瞬間にかかる差圧でアクチュエータの着座力を見ます。ポンプの締切揚程やヘッダ圧が設備更新で変わっていれば、当初の仕様と現在の条件がずれています。この場合、何度トリムを替えても止まりません。

ここまでの確認は銘板と発注仕様書で足ります。型式、トリム番号、アクチュエータ型式とばね範囲。銘板の写真一枚から追える情報が多いところです。形式ごとの仕様の見方は501T の製品ページに、韓国側での供給と整備の体制はKOSO Korea のページに整理しています。取り扱っている形式は製品一覧から辿れます。

開けないと確定しないことは、定期整備のときに見る

現場でできるのはここまでです。着座面の当たりが崩れているのか、ケージのガイド部が摩耗しているのかは、隔離と作業許可を取って開放しないと分かりません。運転中に開けることはできません。次の定期整備、あるいは停止が取れる時期に合わせて、見る項目を先に決めておきます。

シートリーク試験は、要求クラスを先に決めてから行います。基準を決めずに試験だけしても、合格とも不合格とも言えません。写真は当たり面を真上と斜めから、ケージは内面、銘板は型式が読める全体を撮っておくと、あとの判断が早くなります。

トリム交換で戻る状態と、それでは戻らない状態

開放したときの所見トリム交換で戻るか併せて必要になること
当たり面に線状の傷や軽い噛み込み痕。本体内面は健全戻るトリム一式とガスケット・パッキンの同時交換。異物の発生源も押さえる
弁体の縁が丸く欠けている、ケージの窓が抜けている一度は戻るが再発する差圧条件の見直し。多段減圧など、トリム形式そのものの変更
本体内面が洗掘され、肉厚が薄くなっている戻らない肉厚測定と更新の検討。トリムだけ新品にしても本体が持たない
ガイド部のすきまが規定を超えている、弁棒が曲がっている部分的に戻るアクチュエータの据付・芯出しを含めた点検
当たり面は健全だったトリムの問題ではない着座力と要求クラスの再確認。駆動側と仕様側に戻る

表のいちばん下が、実際にはよくある空振りです。停止を取って開けたのに、当たり面はきれいだった。前の節を先にやっておく理由がここにあります。

良かれと思った摺り合わせが、次の漏れを早める

漏れると聞けば、当たりを出そうと摺り合わせをします。一度は止まります。ただ摺り合わせは、当たり幅を広げる方向にしか効きません。幅が広がれば同じ着座力でも面圧が下がるので、次はもっと早く漏れはじめます。弁座の肉も減るため、数回繰り返すと弁体のストロークと全閉位置がずれ、ポジショナの零点を取り直すことになります。

そこで「もっと閉まるように」と零点を負側に振る対応が入ると、悪化がもう一段進みます。全閉のたびにアクチュエータが押し込みを続け、当たり面が塑性変形します。漏れは増える方向です。しかも低開度側の制御レンジが削られるので、少流量域で制御が荒れはじめる。元は締切の話だったのに、運転側からは「最近この弁は制御も悪い」と言われるようになります。

リーククラスを上げたいからと、条件を見ずにソフトシートへ替えるのも同じ筋道です。温度と異物の条件が合っていなければ、シート材は短期間で損傷します。蒸気系や固形分を含む流体では、金属シートのままのほうが結果的に長く止まります。

そして現場でいちばん静かに進むのが、応急のバイパス運用です。制御弁が漏れるので運転側がバイパスで調整を続ける。バイパス弁は調整用ではないので、こちらのシートも通りはじめます。半年後には両方が漏れていて、どちらが先だったのか誰にも分からなくなります。ここまで来ると、定期整備一回では終わりません。

銘板の写真と、その弁に求めるリーククラスをお送りいただければ、分解が要る状態かどうかの判断材料をお返しします — 修理・整備の相談