韓国向けに在庫を置くか、都度輸出か — 部品供給の設計
韓国の顧客から「部品はすぐ手に入りますか」と聞かれます。在庫を置けば答えられますが、資金が寝ます。都度輸出なら負担はありませんが、数週間かかります。この判断は全部か無かではなく、部品ごとの設計です。
置く理由は売上ではありません
部品在庫を持つかどうかを、部品の売上で判断すると、たいてい「持たない」という結論になります。回転が遅く、金額も小さいからです。
実際の効果は別のところにあります。設備を選んでもらえるかどうかです。連続運転の工場では、部品の入手時間が設備選定の評価項目に入ります。ここで弱ければ、性能が良くても候補から外れます。
つまり在庫は部品事業の投資ではなく、設備事業の投資です。この見方に変えると、判断の基準が変わります。
置き方には段階があります
「現地に倉庫を持つ」以外にも方法があります。負担と効果が違うので、並べて比べます。
| 方法 | 資金を持つ人 | 対応時間 |
|---|---|---|
| 都度輸出 | 誰も持たない | 数週間 |
| 初期部品を設備と一緒に販売 | 顧客 | 即時 |
| 顧客に預ける(消化販売) | 自社、使用時に精算 | 即時 |
| 現地の取引先に置く | 取引先または自社 | 数日 |
| 保税倉庫 | 自社、引取時に課税 | 数日 |
二番目が最も見落とされ、最も簡単です。設備と一緒に初期部品一式を売ると、部品は顧客の倉庫に入り、顧客の管理番号で登録されます。費用も顧客持ちです。
顧客側の見方も押さえておきます。買う側にとって、部品在庫を自社で持つことは資金と保管場所の負担です。そのため「無償で置いてほしい」という要望が出ることがありますが、それは誰かが資金を持つという事実を移動させるだけです。誰が持つかを最初に決めて文書にすると、後から負担の話が蒸し返されません。
どの部品を置くか
全点を置く必要はありません。選ぶ基準は二つです。
一つは止まるかどうか。壊れると設備が停止する部品は、現地にあることに価値があります。性能が落ちるだけの部品は待てます。もう一つは消費の頻度。定期交換する部品は計画的に発注でき、在庫の必要性は低くなります。
残るのは、止まる部品で、めったに使わないもの。この組み合わせが在庫の対象です。動きが少ないので資金も寝ますが、その分が保険になっています。
保管の条件も無視できません。ゴムや樹脂を含む部品には保管可能な期間があり、長く置けば劣化します。潤滑剤や接着剤も同様です。在庫しているのに使えない、という状態が最も悪く、必要なときに初めて分かるため気づきにくくなります。入庫日を記録し、期限のある品目は入れ替える仕組みが要ります。
数量をどう決めるか
在庫の量は、消費量と補充期間と許容するリスクから出ます。新しい設備では消費量の実績がないため、最初は推定になります。
推定の材料は、他国での同型設備の実績、設計上の交換周期、そして設備の稼働時間です。これで初期の数量を置き、一年から二年で実績に置き換えます。
この見直しが行われないことが多くあります。誰の担当でもないためです。年に一度、出庫と滞留を見るだけで、在庫の質は大きく変わります。
消化販売で決めておくこと
顧客の倉庫に自社の在庫を置く形では、四点を文書にします。
出庫の連絡——いつどう知らせてもらい、どの周期で精算するか。棚卸——誰がいつ数えるか。減耗と破損——誰が負担するか。終了時の扱い——残った在庫をどうするか。
四番目が抜けると、契約が終わったときに手の届かない場所に在庫が残ります。所有権は自社にあり、資産としては帳簿に載り、実際には回収できないという状態です。
置き場所の選び方もあります。顧客の工場に置くのが最も速い一方、複数の顧客がある地域なら一か所にまとめたほうが効率的です。韓国は主要な産業地が分散しているため、どの地域の顧客が多いかで置き場所が決まります。一か所から半日で回れる範囲に顧客が集まっていれば、個別に置くより集約したほうが在庫の総量は減ります。
税と通関を先に確認します
海外に在庫を置いて現地で売るには、税務の整理が要ります。これは会計の話ですが、方式の可否を決めるので先に来ます。
販売の前に輸入が発生するため、誰が輸入者になり、誰が輸入時の税を負担するかを決めます。現地で販売すれば現地の売上になり、登録が必要になる場合があります。
保税倉庫を使えば、引き取るまで課税が繰り延べられます。ただし倉庫の費用がかかるので、金額と回転の頻度で判断します。この確認を後回しにすると、方式そのものが成り立たないことがあります。
番号の付け方も効いてきます。自社の図面番号がそのまま顧客のシステムに載ると、次回以降の発注が番号一つで通ります。逆に、部品に番号が刻印されておらず資料にしかない場合、毎回「あの部品」という問い合わせから始まります。部品そのものに識別が残っているかを納入前に確認しておく価値があります。
置くことで生まれる副次的な効果
顧客の倉庫にある部品は、その顧客の管理システムに登録されます。消費すると、システムが自動で発注をかけます。
その発注先は、登録された供給元です。つまり毎回競合しなくても注文が来る状態になります。これが在庫の本当の効果で、資金を誰が持つかとは別に働きます。
逆に、最初に部品を渡さないと、システムの登録は後になります。緊急で調達したときに、そのとき対応できた業者の名前で登録されます。同じ仕組みが自社ではなく他社に働きます。
緊急時の手段も用意しておきます。在庫にない部品が必要になったとき、通常の手配より速い経路があるかどうかです。他の顧客の在庫から一時的に融通する、社内の試験機から外す、代替品で暫定的に動かす。どれも事前に決めておかないと緊急時には決められません。在庫を設計するときに、在庫が尽きた場合も一緒に考えます。
都度輸出でも短くできる部分
在庫を持たない選択でも、対応時間は縮められます。時間の内訳を見れば分かります。
受注から出荷までは自社の問題です。梱包と書類の準備が定型化していれば短くなります。輸送は選択の問題で、航空便なら短い。通関は準備の問題で、品目の分類と要件を事前に確認してあれば速く、なければ読めません。
つまり在庫がなくても、分類の事前確認と定型化で数日は詰められます。これは費用のかからない改善です。
在庫を整えた後に残る制約
部品が現地にあり、数日で届く状態になったとします。それでも設備が早く復旧するとは限りません。次の制約が出てきます。
それはどの部品が壊れたかを特定できるかです。部品が倉庫にあっても、故障の原因が分からなければ交換できません。診断に自社の技術者や専用のソフトが要る設備では、部品の所在に関わらず復旧時間は渡航時間に戻ります。
したがって在庫の次に整えるのは、診断を顧客側で完結させる手立てです。警報の意味が分かる資料、切り分けの手順、必要な計測の方法。これがあって初めて、現地の在庫が短い停止時間に変わります。部品だけ置いて手順を渡していない状態は、資金を寝かせた割に効果が出ません。主力設備と止まる部品の候補をお知らせいただければ、どの方式が合うかについて見解をお返しします — 調達のご相談。保守体制の全体像は技術サポート体制で扱っています。