単価は2割下がったのに調達コストが下がらない — 見積書に入っていない諸掛かり

韓国メーカーに切り替えて単価が二割下がりました。ところが年度末に集計すると、調達コストの総額はほとんど変わっていません。差額がどこへ行ったのかを追うと、見積書に一行もなかった費目が並びます。

比較しているのは単価だけです

相見積を並べるとき、比較表の中心は単価です。ここは数字がはっきりしていて、差も大きく見えます。

ところが実際に支払う総額は、単価に複数の費目が乗ったものです。国内調達ならそれらが単価に含まれているか、ごく小さい。海外調達では別立てになり、しかも見積書には現れません。

つまり比較の土俵が違います。同じ形式の見積書を並べているのに、含まれている範囲が同じではありません。

乗ってくる費目

品目や取引条件によりますが、出てくるものはほぼ決まっています。

費目見積に入っているか
輸出梱包別途のことが多い
国内輸送・船積諸費用引渡条件による
海上運賃・保険引渡条件による
関税・輸入時の税ほぼ入っていない
通関手数料入っていない
国内輸送・荷降ろし入っていない
検査費・立会の旅費指定しなければ入っていない
書類作成・翻訳入っていない

このうち検査費は見落とされやすく、金額も小さくありません。立会検査を求めるなら渡航費が要り、第三者機関に依頼するなら別の費用が発生します。

不良が出たときの費用も、比較の外に置かれがちです。返品するなら往復の輸送と通関が要り、代替品を待つ間の欠品が生じます。国内なら翌日に替えが来る場面で、海外では数週間かかることがあります。不良率が同じでも、不良一件あたりの費用が違うということです。この差は品目によって大きく、数量の多い消耗部品ほど効いてきます。

引渡条件が範囲を決めます

どこまでが売手の負担かは引渡条件で決まります。ここを揃えずに比較すると、安く見える見積が実は範囲が狭いだけということが起こります。

工場渡しに近い条件ほど単価は下がり、その先の手間と費用は買手に来ます。逆に、相手の設備まで届ける条件なら単価は上がりますが、途中の手配は不要です。

実務としては、比較の前に条件を一つに揃えるのが確実です。「この条件で出してください」と指定すれば、各社の数字が同じ範囲を指します。指定しなければ各社が自社に有利な条件で出します。

支払条件も実質の費用に関わります。前払の比率が高ければ、その分の資金が先に出ていきます。信用状を使うなら銀行手数料と与信枠が要ります。国内取引の掛け払いと同じ感覚で比較すると、この部分が見えません。金額としては大きくありませんが、資金繰りの制約として効くことがあります。

時間も費用です

金額として出てこない費目もあります。担当者の時間です。

海外調達では、仕様の確認、図面のやり取り、検査の調整、書類の確認、通関の対応が発生します。国内取引では相手が引き受けていた部分を、自社で持つことになります。

一件あたりでは小さくても、件数が増えれば無視できません。年間の発注件数が多い品目ほど、この負担が効いてきます。単価差が大きくても、手間が単価差を食う品目があります。

逆に、国内調達の側にも見えていない費用があります。単価に含まれている輸送費や梱包費、短納期に対応するために相手が持っている在庫の費用。これらは請求書に出てこないだけで、価格の中に入っています。比較するなら両側とも同じ深さで見る必要があり、海外側だけを細かく分解すると、かえって判断が歪みます。国内の見積にも「この価格に何が含まれているか」を一度聞いてみると、比較の精度が上がります。

在庫の持ち方が変わります

納期が長くなれば、欠品を避けるために在庫を増やすことになります。これは資金と保管場所の話です。

国内調達で二週間だった品目が八週間になれば、その差を在庫で埋めるか、欠品のリスクを取るかです。どちらにも費用があり、どちらも見積書には出てきません。

特に設備を止める部品では、この判断が単価より重くなります。止まる時間の損失は部品代を大きく超えることが多く、その前提で考えると安い部品が安くない場合があります。

社内でどの部署が費用を持つかも影響します。単価は購買の予算、輸送費は物流の予算、検査の旅費は技術の予算というように分かれていると、購買の数字だけが改善して全体は変わらない、という状態が起こります。各部署はそれぞれ正しく動いていて、合計を見ている人がいないだけです。品目ごとに総額を追う担当を決めておくと、この形は避けられます。

初回と二回目以降は違います

費目の一部は初回だけ発生します。仕様の確認、図面の作成、初品の検査、書類の整備。

これを初回の一件に全部乗せると、海外調達は割高に見えます。逆に無視すると、二回目以降の見通しが立ちません。

判断としては、その品目を何回発注するかで按分して考えます。反復する主力品目なら初回費用は薄まり、単価差が効いてきます。単発なら初回費用が支配的で、国内で済ませたほうが安いことが多くなります。

為替をどう置くか

発注から支払までの間に為替が動きます。期間が長いほど幅が出ます。

比較の時点でどのレートを使ったかを記録しておかないと、後で差額が出たときに原因が分かりません。単価が上がったのか、レートが動いたのかが区別できなくなります。前者なら交渉の材料になりますが、後者は交渉しても動きません。この区別ができないまま値上げの話をすると、根拠のない要求として扱われます。

実務的には、見積比較時のレートを明記し、支払時のレートと並べて記録します。この二つがあれば、翌年の比較で為替分を除いた実質の差が見えます。

総額で比較する形にする

結局のところ、必要なのは同じ範囲で並べた総額です。作り方は難しくありません。

比較表に費目の行を足します。単価、数量、梱包、運賃、保険、関税、通関、国内輸送、検査、書類。国内調達の欄では多くがゼロか単価に含まれ、海外調達の欄では数字が入ります。

この表を一度作れば、次からは同じ形式で埋めるだけです。そしてどの費目が抜けているかが一目で分かるため、見積を受け取った時点で確認すべき項目が決まります。空欄が残っている限り、その見積はまだ比較できる状態にありません。

安く見えた見積の読み違い

費目を全部並べても、なお読み違えることがあります。範囲が同じでも、前提が違う場合です。

よくあるのは、検査の範囲、材料証明の種類、梱包の仕様です。どれも「標準」と書かれていて、その標準が各社で違います。安い見積は自社の標準で出しており、それが要求水準に届いていないだけということがあります。

これは費目の抜けではないので、金額の欄を見ても分かりません。分かるのは仕様の欄で、そこに「別紙による」とだけ書かれているときは要注意です。安く見えた差額の正体が、後から追加費用として戻ってくるか、品質の差として現れます。品目と現在の調達条件をお知らせいただければ、どの費目が抜けやすいかについて見解をお返しします — 調達のご相談。納期側の抜けはこちらで扱っています。