注文書に書いておくべきだった一文 — 不良が出た後で代替品が来ない

納入された部品に不良が見つかりました。相手は非を認め、代替品を送ると言います。ところが待っても届きません。催促すると「次の生産に載せます」という返事で、その次がいつかは分かりません。設備は止まったままです。

不良の合意と代替の合意は別です

不良を認めるのと、いつまでに代わりを出すのかは別の話です。前者は事実の確認で、後者は約束です。

ところが多くの注文書は、不良があった場合の扱いを「無償で交換する」としか書いていません。無償であることは決まっていて、いつまでにが決まっていません。

相手からすれば、代替品は追加の生産です。通常の受注が詰まっていれば、その隙間に入れることになります。悪意ではなく、優先順位の問題として後ろになります。

相手の生産の組み方も関係します。まとめて材料を手配し、まとめて加工する工程では、数個の追加だけを割り込ませることが構造的に難しくなります。「次の生産に載せます」という返事は、断りではなくその工程の実際の制約を言っていることが多いものです。これが分かっていれば、催促の仕方も変わります。次の生産がいつかを聞き、それより早める手段があるかを聞くほうが前に進みます。

止まっているのは相手ではありません

この状況で困っているのは買手だけです。相手にとっては、既に代金を受け取った案件の手直しです。

だからこそ、注文書に時間の約束が要ります。書いていなければ交渉の材料がなく、書いてあれば期限の話ができます。

ここで有効なのは、期限そのものよりも期限を過ぎた場合の扱いを書いておくことです。何が起きるかが決まっていれば、優先順位は自然に上がります。

注文書に入れておく項目

長い条項は要りません。実務で効くのは数行です。

項目書かないとどうなるか
不良判定の方法不良かどうかで議論が始まる
連絡から代替出荷までの日数期限がなく後回しになる
不良品の返送要否と費用返送を待って代替が止まる
輸送費の負担急送するかどうかで揉める
期限を過ぎた場合の扱い催促以外に手段がない
再発防止の報告同じ不良が次のロットでも出る

三番目は見落とされやすい項目です。不良品の返送を代替出荷の条件にすると、往復の輸送と通関で数週間かかります。写真での確認で足りる場合は、そう書いておきます。

受入の記録も効いてきます。いつ何個を受け入れ、そのうち何個が不良だったかが残っていないと、後から数量の話ができません。不良を抜いて使ってしまうと、証拠も数量の根拠も消えます。不良品は分けて保管し、写真を撮ってから連絡するのが順序です。使ってしまった後の主張は通りにくくなります。

判定の方法を先に決めます

不良かどうかで意見が分かれると、代替以前に時間が過ぎます。分かれる原因は、判定の基準が書かれていないことです。

寸法なら測定方法と測定箇所、外観なら限度見本、性能なら試験条件。これらが注文書か仕様書にあれば、判定は事実の確認になります。なければ主張の突き合わせになります。

特に外観は言葉で決められません。合格品と不合格品の写真を一度交換しておくだけで、後の議論がほとんど消えます。

急ぐときの手段を用意しておく

設備が止まっている場合、通常の生産枠を待てません。この場合に使える手段を先に決めておきます。

選択肢はいくつかあります。相手の在庫から出す——同型品の在庫があれば最短です。代替品で凌ぐ——仕様が近い別型式を暫定で入れる。第三者に作らせる——図面がこちらにある場合に限られます。

どれも事前に決めておかないと、緊急時に一から交渉することになります。最初の発注時に「止まる部品かどうか」を伝えておくと、相手も在庫の持ち方を考えます。

輸送の手配も先に考えておきます。急ぐ場合は航空便になりますが、重量物では選べないことがあり、通関の時間も別に要ります。「航空便で送ります」と言われても、手元に届くまでには数日かかります。出荷日ではなく着荷日で約束をもらうと、設備の復旧予定が立てられます。

再発させない部分

代替品が届いて設備が動けば、多くの場合そこで終わります。ところが同じ不良が次のロットでも出ることがあります。

原因が特定されていないからです。「確認して対応します」で終わった案件は、何が起きたかが記録に残りません。担当者が代わればゼロに戻ります。

求めるべきは原因と対策を一枚でです。長い報告書は要りません。何が原因で、どの工程を変えたか、いつの生産分から反映されるか。この三つがあれば、次のロットの受入で確認できます。

報告を求める相手も決めておきます。営業の窓口に聞いても、製造や品質の情報がそのまま返ってくるとは限りません。品質に関する連絡先を最初に確認しておくと、不良が出たときに一段階省けます。平時に聞いておく質問で、緊急時には聞きにくくなる種類のものです。初回の取引で窓口一覧をもらっておけば足ります。

数量と単価の関係

不良が数個なら代替も数個ですが、そこで単価の話が出ることがあります。少量の追加生産は相手にとって割に合わないためです。

これを避けるには、最初の発注に予備を含める方法があります。数量が増えれば単価が下がり、不良が出ても手元の予備で凌げます。

予備の分だけ在庫は増えますが、設備が止まる時間と比べれば判断は明確です。特に納期の長い部品では、予備を持たない選択のほうが高くつきます。どの部品に予備を持つかは、止まるかどうかで決めれば足ります。

関係を壊さずに進める

不良対応は、取引関係が最も傷つきやすい場面です。ここでの進め方が、その後の取引を決めます。

効果があるのは、責任の話と復旧の話を分けることです。まず代替品をいつ出せるかを決め、原因と費用負担は別の議題にします。一緒にすると、責任が決まるまで代替が動きません。

連絡の形も変わります。「不良でした、どうしますか」より、「この部品が何個必要で、いつまでに要る」のほうが動きます。相手が答えられる形の依頼にすることが、結果として早くなります。

注文書で空欄のまま出している欄

不良対応で揉めた案件の注文書を見ると、同じところが空いています。品名、数量、単価、納期は埋まっていて、不良時の条件が丸ごとないのです。

書かない理由は分かります。発注の時点では不良を想定しておらず、書くこと自体が相手を疑う印象を与えると感じます。国内取引なら慣行で埋まる部分でもあります。

ただし慣行は国境を越えません。相手にとっての標準は相手の他の顧客に合わせたもので、こちらの想定とは違います。疑いではなく手順として書く——「不良が生じた場合の連絡先と代替出荷の目安日数」という項目にすれば、相手も事務的に埋められます。一度雛形に入れておけば、以後の注文書すべてに乗ります。品目と現在の注文書の条件をお知らせいただければ、どの項目を足すべきかについて見解をお返しします — 調達のご相談。仕様側の抜けはこちらで扱っています。