デモ機を一時的に韓国へ持ち込む — ATAカルネと再輸出の段取り
韓国の見込み客が「うちの工場で動かして見たい」と言う。展示会のブースではなく、実際の材料を使って自社ラインで確認したいという話です。商談としては最良の展開ですが、通関上は輸入であり、段取りを誤ると持ち帰る費用が受注額を上回ります。
一時的でも輸入は輸入です
韓国に送って戻す機械も、輸入の時点では他の貨物と同じ扱いを受けます。一時的な持ち込みのための手続きを取らない限り、通常の課税対象になります。
手続きを取らなければ関税と輸入時の税が全額かかります。デモ機の評価額が大きければ相応の金額が一旦出ていき、戻すときの還付にはそれぞれ条件がつきます。
一時持ち込みの制度は、担保を預けて期限内に持ち出せば解放される仕組みです。前提として、同じ物が戻ることが必要です。同種の別の個体では通りません。
ATAカルネで何ができるか
ATAカルネは一時持ち込みのための国際的な通関書類です。国内の商工会議所が発行し、加盟している国で使えます。
一冊で輸出・輸入・再輸出・再輸入の各段階をまかなえるため、現地で個別に手続きを取る必要がなくなります。通関の窓口でのやり取りも短くなります。
有効期限があり、詳細な物品リストに紐づきます。一緒に持ち込むものはすべてリストに載せる必要があり、品名・数量・重量・価額を書きます。リストにないものは対象になりません。
評価額の書き方にも注意が要ります。低く書けば担保は小さくなりますが、万一の損傷や紛失のときに戻る額もそれで決まります。逆に高く書くと担保が膨らみます。実際の再調達価格に合わせるのが原則で、節約のために操作すると、事故が起きたときに自分が損をします。
カルネに載せてはいけないもの
ここが実務で最も誤りやすい部分です。判断は一つの基準で決まります。
| 持ち込むもの | 扱い |
|---|---|
| デモ機本体 | カルネ — 同じ物が戻る |
| 工具・計測器 | カルネ — 同じ物が戻る |
| 試験に使う材料 | カルネ不可 — 消費される |
| 置いてくるサンプル | カルネ不可 — 通常輸入 |
| 取り付ける交換部品 | カルネ不可 — 通常輸入 |
基準は同じ物が戻るかどうかだけです。戻らないものは通常輸入として申告します。少額であれば手続きは簡単です。誤ってカルネに載せると、再輸出の際に数が合わず担保が使われます。
リストの作り方も実務では効きます。機械を分解して複数の梱包に分けて送る場合、どの単位で記載するかを最初に決めます。細かく分けすぎると再輸出の照合が煩雑になり、まとめすぎると一部だけ持ち帰るときに困ります。梱包単位と記載単位を揃えておくと、現地での確認が短く済みます。
期限が本当の危険です
カルネ自体の有効期限に加えて、輸入時に現地側が再輸出期限を設定します。両方を守る必要があります。
実務では、評価が長引いたり、先方がもう一度試したいと言ったり、決裁が下りるのを待ったりして、持ち帰りが延びます。そしてその時期こそ相手の関心が最も高く、置いておきたい圧力も強くなります。
延長は一定の範囲で可能ですが、期限が来る前に申請する必要があります。切れてからでは担保が処理され、後から説明しても手間が大きくなります。予定を入れるなら期限日ではなく、その手前に置きます。
売れた場合の手続き
成約という良い結果にも、それ専用の処理があります。一時持ち込みで入れた機械をそのまま置いてくる場合、通常の輸入に切り替える必要があります。
可能ですが、能動的な手続きです。関税と税が発生し、カルネはその形で締めます。請求書だけ出してカルネを放置すると、通関手続きが未了のまま担保が使われます。
売れた場合の扱いを、送り出す前に決めておきます。誰が輸入時の税を負担するのか、価格はどう組むのか。成約した瞬間にこれを交渉するのは、双方が済んだと思っている話を蒸し返すことになります。
輸送と梱包が普通と違います
デモ機は普通の納入品より移動回数が多く、開梱と再梱包を繰り返します。梱包の考え方が変わります。
使い捨ての木枠は向きません。ねじ止めで繰り返し開閉できる木箱で、吊り点が決まっているものが適しています。現地で開けて、また閉めて送り返せる形です。
通関の面では、梱包材自体がリストの対象になることがあり、木材梱包の表示も必要です。行きに通った箱が、帰りにも同じ検査を受けます。
据付と立会の段取りも先に詰めます。相手の工場に入るには安全教育や入構手続きが要り、当日に行って作業できるとは限りません。連続運転の工程なら、機械を入れられる時間帯が停止計画に縛られます。デモの日程は、機械が着く日ではなく作業できる日から逆算します。
現地での責任範囲を決めておきます
デモの間、自社の機械が他社の工場に置かれ、他社の作業者が操作し、他社の材料を通します。送り出す前に決めておく項目があります。
三つです。保険——輸送中と滞在中の付保。操作——誰が動かしてよいか、立会は要るか。返却時の状態——通常の摩耗をどこまで許容するか。
三つ目が最も揉めます。デモ機が出荷時の状態で戻ることは稀で、何を通常とするか決めていないと、返却後に議論が始まります。商談が微妙な段階にあるときに、この話が出るのは避けたいところです。
技術者の滞在についても見ておきます。設置と立会のために人を出すなら、滞在日数と入構の可否が日程に直接効きます。現地で対応できる人がいれば毎回渡航しなくて済み、複数社を回るデモでは差が大きくなります。渡航のたびに日程が空くのを待つことになるためです。
デモで得られるのは受注だけではありません
実際の材料と実際の条件で運転したデータは、他では手に入りません。これを残すかどうかで、その後の価値が変わります。
処理量、消費量、品質値、停止回数。これらを記録しておけば、その用途に対する数字の裏づけがある実績になります。韓国国内の実績が取りにくい段階では、特に効きます。
そのため、何を記録し、それをどう使ってよいかを事前に合意しておきます。社名を伏せた形でも、実測値のある運転結果はカタログ値より重く扱われます。この許可はデモの最中のほうが取りやすく、終わってからでは話が面倒になります。
同じ機械を三社に見せるなら
小型の機械では、カルネを取らずに通常輸入で入れ、後で還付を受けるか費用として処理する、という考え方が出てきます。
これは思ったほど得になりません。再輸出時の還付には証明と期限がつき、同一性——同じ個体であること——も示す必要があります。手間は正規の手続きと変わらず、担保による保護だけがありません。
特に高くつくのが、何度も運ぶ場合です。通常輸入は毎回一件ずつ処理が発生しますが、カルネは有効期間内なら複数回の移動をまかなえます。三社に見せて回るなら、カルネなら一件、なしなら三件です。重量・価額・滞在予定をお知らせいただければ、適した持ち込み方について見解をお返しします — 調達のご相談。通関で止まる書類は別記事で扱っています。