発注者・EPC・ベンダーの三層 — 韓国のプラント案件はどこで決まるか

韓国のプラント案件に営業をかけているのに手応えがない。発注者の購買には会えた、EPCにも資料を送った。それでも引合いが来ないとき、たいてい抜けているのは「いつ」の部分です。三つの層のどこで決まるかは、時期によって移動します。

三つの層が順番に関わる

新設のプラント案件では、発注者、EPCコントラクター、機器ベンダーの三層で仕事が流れます。発注者が投資を決め、EPCが設計と調達を担い、ベンダーが機器を納めます。

ここで重要なのは、三層が同時に動いていないことです。発注者が仕様の方向を決める段階、EPCが機器を選ぶ段階、購買が価格を詰める段階は、時期がずれています。

営業が空振りするのは、相手が間違っているからではなく、その相手がその時期に決める立場にないからです。同じ会社の同じ部署でも、三か月後には決める内容が変わっています。

時期ごとに誰が決めているか

おおまかな流れは次のようになります。

段階決まること主に動く相手
計画・基本設計プロセス構成、主要機器の考え方発注者の技術部門、設計会社
詳細設計機器の仕様、ベンダーリストEPCの設計、発注者の技術
調達引合い、比較、発注EPCの購買
製作・検査図面承認、立会検査EPCの品質、発注者の検査
据付・試運転現地工事、性能確認建設、発注者の運転部門

自社の製品が候補に入るかどうかが決まるのは、二段目です。三段目の調達で初めて接触しても、比較の対象にはなれても仕様に自社の条件が入っていない状態で戦うことになります。

期間の感覚も押さえておきます。計画から着工までは年単位、詳細設計は数か月、調達はそれより短く動きます。つまり入り込める窓は前半ほど長く、後半ほど狭い。後半に接触するほど、短い期限で反応することを求められます。営業の負荷という意味でも、前半に入るほうが楽になります。

仕様が書かれる場所

機器の仕様書は、EPCの設計部門が作ります。ただし白紙から書くわけではなく、発注者の標準仕様と、過去の類似案件の書式が下敷きになります。

つまり、仕様に影響するには二つの入り口があります。一つは発注者の標準仕様で、これは案件と関係なく存在し、更新の機会に議論されます。もう一つはその案件の設計段階で、ここは期間が限られます。

前者は時間がかかりますが、一度入れば複数の案件に効きます。後者は速いですが、その案件限りです。どちらを狙うかで、訪問すべき相手も資料の作り方も変わります。

仕様書に書かれる内容にも段階があります。最初は性能の要求だけが書かれ、次に構造や材質の条件が加わり、最後に型式や同等品の指定が入ります。型式が書かれた後に入り込むのは難しく、構造や材質の条件が決まる段階が実際の勝負どころです。そこで自社の強みが条件として書かれれば、後段の比較で有利になります。

発注者とEPCのどちらが強いか

これは案件によって変わり、一般論では決まりません。判断の材料になるのは次の点です。

実務としては、自社の品目がどちらの管轄かをEPCの購買に直接聞くのが早道です。この質問は失礼になりませんし、答えは明快に返ってきます。

既設の案件は流れが違う

ここまでは新設の話です。既設設備の更新や増設では、EPCが入らないことも多く、発注者が直接買います。

この場合に強いのは保全部門です。何が壊れやすく、何の部品が手に入りにくいかを知っているのは彼らで、更新の提案も現場から上がります。購買は条件を整えますが、機種の選定には深く入りません。

新設と既設では、同じ会社でも接触すべき相手が違います。新設だけを見ていると、実は回数の多い既設の案件を丸ごと逃します。

海外の案件も同じ構造で動きます。韓国のEPCは国内だけでなく中東や東南アジアのプラントも手がけており、その調達は韓国で行われます。「韓国向けの営業」と考えていると、この部分が視野から抜けます。納入先が韓国国内とは限らない、という前提で相手を見ておくと、機会の数が変わります。

既設側で効く材料も新設とは違います。新設では性能と価格が中心ですが、既設では現在使っている機器との互換性と、据付の停止時間をどれだけ短くできるかが前に出ます。取合い寸法が既設と同じであること、工事が一日で終わることは、カタログ性能より重く評価されることがあります。この違いを知らずに新設向けの資料をそのまま出すと、話がかみ合いません。

下請けの階層はもう一段ある

三層と書きましたが、実際にはもう一段あることがあります。EPCが機器一式を専業のメーカーに発注し、そのメーカーが部品を調達する形です。

自社の製品が部品の位置づけなら、直接の取引先はEPCではなくそのメーカーになります。ここを取り違えると、EPCに営業をかけ続けて、実際の買い手に一度も会わないという事態になります。

確認の方法は単純で、過去の類似案件で自社の品目を誰が買ったかを聞くことです。一件でも分かれば、その案件の構造が見えます。この質問は取引先を詮索するものではなく、自社がどこに見積を出せばよいかの確認なので、相手も答えやすい部類に入ります。

会えた相手が決める人とは限らない

よくある誤解は、会えた相手の肩書きで判断してしまうことです。購買の担当者に会えたから商談が進んでいる、と考える。実際には、購買は決まった候補の中で条件を詰める役割であることが多く、候補に入るかどうかは別の部署で決まっています。

逆のこともあります。技術部門の若手担当者が、仕様書の該当箇所を書いていることがあります。肩書きは決定権を示しません。

聞き方としては、「どなたが決めますか」よりも「この項目はどの部署が書きますか」のほうが具体的な答えが返ります。仕様書の項目単位で聞けば、相手も答えやすくなります。

追うべきは今の案件ではなく次の設計段階

調達の段階で初めて接触し、そこから仕様の変更を求める——これは避けたほうがよい動きです。

変更には設計のやり直しと、承認の取り直しが伴います。EPCにとっては工程の遅れになり、提案の内容に関わらず歓迎されません。良い技術であっても、その時期に持ち込めば「工程を乱す相手」として記憶されます。

そして次の案件でも、その記憶は残ります。急いだことで、間に合わなかった案件だけでなく次も失う——このため、時期を外したと分かった時点では、その案件を追わずに次の設計段階に照準を合わせるほうが結果的に早くなります。資料を渡して関係を作っておけば、次の設計段階には候補として名前が出ます。

対象としている分野と自社の品目をお知らせいただければ、その品目がどの層で決まるのかについて見解をお返しします — 調達のご相談年度予算の周期と合わせて見ると、動く時期が具体的になります。