韓国の設備投資は年度予算で動く — 引合いが集中する時期と準備の順番
韓国の担当者から「今は予算がない」と言われる。数か月後、同じ相手から急に見積依頼が来て、回答期限は一週間。この波は担当者の気分ではなく、年度予算の組み方から出ています。時期が読めれば、準備の順番も変わります。
設備投資は年度予算の枠で動く
韓国の製造業では、設備投資が年度単位の予算枠で管理されているのが一般的です。枠に入っていない案件は、金額が小さくても稟議が通りにくくなります。
ここから二つのことが出てきます。一つは、枠を作る時期に情報が入っていないと、翌年は検討の対象にならないということ。もう一つは、枠が確定した後は動きが速いということです。引合いから発注までが短く、回答が遅れると外れます。
日本の輸出者が取りこぼすのは、たいてい前者です。引合いが出た時期に営業を強めても、そのときには候補が決まっています。効くのは、その数か月前です。
金額の規模によって決裁の高さが変わる点も押さえておきます。一定額を超えると役員決裁や取締役会の案件になり、必要な資料と期間が跳ね上がります。担当者が「社内で見ています」と言うときに動いているのがどの層かで、待つべき時間が違います。金額の目安を聞いておくと、こちらの追いかけ方も変わります。
一年をどう区切って見るか
相手先によって時期はずれますが、流れの形は共通しています。おおよそ次のように分けて考えます。
| 時期の区分 | 相手側で起きていること | こちらの動き |
|---|---|---|
| 予算の検討 | 次年度の投資項目を積み上げる | 技術資料と概算を渡しておく |
| 予算の確定 | 枠が承認され金額が固まる | 仕様への反映を確認する |
| 調達の実行 | 引合い、比較、発注 | 短い期限で見積を返す |
| 据付と検収 | 工事、試運転、支払 | 立会と書類を揃える |
重要なのは、価格を出す時期と金額が決まる時期がずれていることです。引合いで出す見積は、既に枠に収まる金額として設定されています。その枠は前の段階で決まっており、概算を出した相手の数字が枠の根拠になっていることが少なくありません。
概算を出す段階が効く
予算を組む担当者は、金額の根拠を必要とします。そこに数字がなければ項目は立ちません。逆に言えば、その時期に概算を渡しておくと、枠の中に自社の構成が入ります。
この段階で出すのは詳細見積ではありません。構成と概算金額、標準的な納期、付帯工事の目安があれば足ります。むしろ精密すぎる見積は、条件が固まっていない段階では使いにくいものになります。
注意すべきは、この概算が後で拘束と受け取られることです。前提条件を書かずに金額だけ渡すと、実際の見積が上がったときに説明が要ります。数量・仕様・為替の前提を一行ずつ添えるだけで、後の交渉が楽になります。
為替の扱いも概算の段階で決めておきます。円建てで出すか、ドル建てにするかで、相手側の稟議書に載る金額が変わります。枠を作る時点と発注の時点で為替が動けば、同じ構成でも金額が合わなくなります。概算に有効期限と為替の前提を書いておくと、後で金額を見直す根拠になります。書いていなければ、値上げの交渉として扱われます。
更新と新設で時期が違う
既設設備の更新は、定期整備の計画に紐づいて動きます。装置を止められる時期が限られるため、工事の時期が先に決まり、そこから逆算して調達の日程が組まれます。つまり納期のほうが先に決まっている案件です。
新設のプラントは、投資の意思決定から着工までの期間が長く、設計段階で機器の仕様が固まります。この場合に効くのは、設計を担当する側に技術資料が届いているかどうかです。
同じ会社でも、この二つは動く部署が違うことがあります。保全部門と技術部門の両方に資料が届いているか、一度確認しておく価値があります。
年度の区切りそのものも相手先によって違います。暦年で動く会社もあれば、グループの方針で別の期を使う会社もあります。相手の決算期を確認しておけば、検討の山がいつ来るかの見当がつきます。これは公開情報から確認できることが多く、聞きにくい話でもありません。
期末に出てくる案件の性格
予算を使い切る動きが出る時期があります。枠に残りがあり、それを年度内に執行しようとする案件です。
この種の引合いは、納期と書類の条件が厳しくなります。年度内の検収が条件になっていれば、出荷だけでなく据付と試運転まで含めて日程が合うかを見る必要があります。「納期に間に合います」と答えた後で、検収の要件を満たせないと分かるのが最も悪い形です。
受ける場合は、検収の条件を先に文書で確認することです。何をもって完了とするか、立会は必要か、書類は何を出すかが決まっていれば、日程の可否は計算できます。
もう一つ、投資の性格によって通りやすさが違います。生産能力を増やす案件は景気の見通しに左右されますが、安全や環境の規制対応、老朽設備の更新は先送りしにくい性格を持ちます。自社の製品がどちらの文脈で説明できるかによって、枠に入る確度が変わります。同じ機械でも「増産のため」と「規制対応のため」では、稟議での扱いが別になります。
訪問と展示の時期をどこに合わせるか
営業の訪問を引合いの時期に合わせると、遅すぎます。合わせるべきは予算を検討する時期です。そこで話した内容が、翌年の項目になります。
展示会も同じ考え方で見ます。会期そのものより、その後に何が起きるかが問題です。名刺を集めた後、技術資料を送るところまでを会期中に決めておかないと、その後の数か月で関係が切れます。
現地訪問については、相手の事業所が集中している地域をまとめて回るほうが効率的です。韓国は石油化学、鉄鋼、半導体などの集積地がそれぞれ分かれており、移動の計画次第で一回の渡航で会える相手の数が変わります。
短い回答期限に備えておく
引合いが来たときに間に合わないのは、社内の手順が決まっていないからです。設計計算を誰がするか、価格の承認を誰が出すか、韓国向けの標準条件は何かが決まっていれば、一週間でも回せます。
特に決めておくとよいのが、韓国向けの標準的な引渡条件と支払条件です。案件ごとに一から考えていると、技術の検討より事務の確認に時間を取られます。ベンダー登録を進めるなら、その過程で提出書類を揃える作業が、そのまま見積体制の整理にもなります。
一年待つことになる分かれ目
時期を外した場合の損失は、その案件一件では終わりません。枠に入らなければ、次の機会は一年後です。競合が枠に入っていれば、そのときには既設設備として比較の基準になっています。
そして翌年に巻き返そうとしても、更新の周期は数年単位で回ります。一度決まった構成は、次の更新まで動かないことが多いところです。時期を外すことの影響が、実際の日程より長く残るのはこのためです。
来年の韓国営業で考えている訪問や出展の予定をお知らせいただければ、相手先の検討時期との重なりについて見解をお返しします — 調達のご相談。