RCEP原産地証明を使う前に社内で確認すること — 韓国向けの関税

韓国向けの見積で、相手先から「原産地証明は出せますか」と聞かれる。輸出実務の担当に回すと「RCEPで対応できます」と返ってくる。ところが実際に手続きに入ると、部材の調達国が分からず止まる。ここで必要なのは書式ではなく、社内のどこにどの数字があるかの整理です。

日韓の間にあるのはRCEPです

まず枠組みを確認しておきます。日本と韓国の間には二国間の経済連携協定がありません。関税を下げる根拠として使えるのは、両国が参加しているRCEP協定です。

これはヨーロッパの輸出者とは事情が違うところです。EUや米国の企業は韓国との二国間協定を使えますが、日本の輸出者はRCEPの枠内で考えることになります。原産地規則も、証明の出し方も、その枠組みのものに従います。

実務上の注意は、協定ごとに税率の下がり方が違うことです。RCEPには段階的に下げていく品目があり、同じ品目でも年によって適用税率が変わります。「協定があるから無税」という前提で見積を出すと、実際の税率と食い違うことがあります。

効果があるかを先に確かめる

手続きに入る前に、そもそも下がるのかを見ます。確認するのは三つです。

確認内容
HSコード自社製品が韓国側でどの分類になるか
基本税率協定を使わない場合に韓国で課される税率
協定税率その品目のRCEP適用税率と、当該年の段階

基本税率がもともと低い品目では、手続きの手間に見合わないことがあります。機械類は品目によって扱いが分かれるので、「機械だから」と一括りにはできません。

あわせて見ておくのが、その品目に輸入時の要件確認が付くかどうかです。関税率とは別の話で、品目によっては通関の際に認証や検査の確認が入ります。関税の手続きだけを整えても、そちらで止まれば同じことです。対象になり得る機器は安全認証の確認手順で整理しています。

この確認は韓国側の輸入者のほうが早いことが多いものです。通関業者を通じて分類と税率を確認してもらい、その回答を前提に手続きを始めるほうが、日本側で推測するより確実です。

誰が誰に対して証明するのかも整理しておきます。関税を下げる申告をするのは韓国側の輸入者であり、日本の輸出者はその根拠資料を出す側です。つまり期限を握っているのは相手方の通関日程で、こちらの社内手続きの都合とは別に動きます。ここを取り違えると、必要な時期を一週間単位で読み違えます。

原産地規則は「どこで作ったか」ではない

ここが最も誤解されるところです。日本の工場で組み立てたからといって、自動的に日本原産にはなりません。

判定は品目ごとの規則に従います。よく使われるのは二つの型で、一つは関税分類の変更、つまり使った材料と完成品でHSコードの区分が変わること。もう一つは付加価値の基準で、域内で付けた価値が一定割合以上あることです。

機械の場合、ここで効いてくるのが購入部品です。第三国から調達した制御機器、モーター、鋳物などは、その金額が判定に影響します。「だいたい国産です」では判定できず、金額で押さえる必要があります。

一方で、RCEPは参加国が広いという特徴があります。域内で調達した部材は扱いが変わるため、第三国製に見える部品でも結果が変わることがあります。自社の調達先がどの国に属するかを一覧にしておくと判断が速くなります。

社内で先に揃える三つ

証明を出す前に、根拠となる数字を作ります。必要なのは次の三つです。

部材表は購買、価格は原価、分類は輸出実務と、担当が分かれているのが普通です。案件のたびに三部署に問い合わせていると回答が間に合いません。主力機種については案件と切り離して先に作っておくのが現実的な進め方です。

仕入先から原産国の回答が得られない部材も出てきます。その場合は非原産として扱うことになりますが、判定に余裕があるなら結論は変わりません。どの部材の回答が欠けているかを一覧にしておけば、次に取りに行く先が分かります。

手間に対する見返りも一度計算しておくと判断が早くなります。基本税率が数パーセントでも、プラント一式のように金額が大きければ一回の出荷で相応の差が出ます。逆に、単価の低い部品を年に数回送るだけなら、判定と書類の手間が上回ることがあります。反復して出荷する主力機種から手を付けるのが順序として無理がありません。初回に判定を作っておけば、二回目以降は書類を出すだけになるためです。

証明の出し方が複数ある

RCEPでは証明の方法が一つに限られません。第三者機関が発給する原産地証明書のほか、認定を受けた輸出者が自ら申告する方式、輸出者や生産者が申告する方式があります。

どれを使えるかは制度上の条件と、韓国側の税関がその方式を受け入れる状況によります。先に韓国側の輸入者に、どの方式で受理されるかを確認してもらうのが確実です。日本側で方式を決めてから食い違うと、通関の直前に作り直すことになります。

いずれの方式でも、判定の根拠となる資料は輸出者側で保管します。証明を出すこと自体より、その裏づけを持っていることのほうが重要です。

書類の記載が合っていないと使えない

内容が正しくても、記載の不一致で受理されないことがあります。実務で多いのは次の三つです。

一つ目は品名の不一致。インボイスの品名と証明書の品名が違うと、同じ貨物だと確認できません。二つ目はHSコードの桁数と分類で、日本側と韓国側で分類が分かれることがあります。三つ目は数量・重量の不一致で、分割出荷したときに起きやすいところです。

いずれも、貨物が港に着いてから直すと時間と費用がかかります。船積書類を作る段階で、インボイス・パッキングリスト・原産地証明の三つを並べて突き合わせるのが確実です。

補修部品と無償品でつまずく

本体の手続きが固まった後、運用で出てくるのが小口の出荷です。

補修部品を単体で送る場合も、関税を下げるなら同じ判定が要ります。他社から仕入れてそのまま転売する部品は、自社の工場を通っていても日本原産とは限りません。本体と同じ扱いで証明を出すと、内容と実態が食い違います。

クレーム対応の無償交換品も同じです。無償でも輸入時には課税価格が付きます。プロフォーマインボイスに「税関申告用の価格」とだけ書いても、原産地の申告を兼ねることにはなりません。

数年後の確認に耐えるか

判定が覆るのは、最初の出荷ではありません。仕入先を切り替えた後に多く起きます。

部材の調達先が第三国に変わっても、社内の証明の運用は前のまま流れ続けます。判定の前提が変わったことに気づくのは、事後確認の照会が来たときです。そのときに求められるのは当時の部材表と金額であり、新しく作り直したものではありません。

防ぎ方は単純で、部材表の変更と原産地判定の見直しを同じ手続きにつなげておくことです。仕入先変更の承認フローに一行足すだけで足ります。HSコードの候補と主要部材の調達国が分かる状態でご連絡いただければ、確認が要る箇所について見解をお返しします — 調達のご相談