立会検査に人を出せない — 写真と動画でどこまで確認できるか

韓国の工場で立会検査の日程が決まりました。ところが人を出せません。日程が急に決まった、担当が他の案件と重なった、費用が出ない。理由はさまざまですが、選択肢は三つです。行かない、写真と動画で確認する、第三者に依頼する。どれを選ぶかは、何を確かめたいかで決まります。

立会で何を見ているのか

まず整理しておきます。立会検査で確認しているのは、大きく三つです。

一つは測定値が要求を満たすこと。数値の確認で、これは記録があれば足りる部分が多くあります。二つ目はその値が正しく測られたこと。測定方法、機器、条件の確認です。三つ目は目の前のものが自分の注文品であること。同一性の確認です。

この三つは、遠隔で代替できる度合いが違います。一つ目は書類で足り、二つ目は映像で相当程度まで見えます。三つ目が最も難しく、ここが遠隔立会の限界になります。

費用の比較も判断材料になります。技術者を一人送れば渡航費と滞在費、そして数日分の人件費がかかります。日程が動けば予約の変更費も乗ります。第三者機関への委託はこれより安いことが多く、遠隔立会はさらに安くなります。費用の差だけを見れば遠隔が有利ですが、確認できる範囲が違うので、単純な置き換えにはなりません。

写真と動画で足りる範囲

映像で確認できることは、思っているより多くあります。

確認したいこと映像で可能か
計器の指示値可能——読み取れる画角なら
試験の手順と条件可能——通しで撮れば
外観の状態条件付き——照明と解像度による
寸法測定条件付き——測定の様子は見えるが値の信頼は別
音・振動困難——記録機器があれば別
仕上がりの触感不可
現品の同一性困難——銘板は撮れるが取り違えは防げない

表の下半分が、遠隔にしたときに失うものです。失うものを把握した上で選ぶなら遠隔は有効で、把握せずに選ぶと、立会をしたつもりで何も確認していない状態になります。

撮り方を指定します

「写真を送ってください」だけでは、判断に使えないものが届きます。必要なのは、何をどう撮るかの指定です。

効く指定は具体的です。通しで撮る——編集された断片では前後が分かりません。機器と対象を同じ画面に入れる——別々に撮ると、その計器でその品を測ったことが示せません。校正ラベルを写す——機器の状態が分かります。銘板と一緒に撮る——どの個体かが残ります。

これらは撮影者にとって手間ですが、指定がなければやりません。事前に一枚の指示書を渡しておくのが実務的です。

遠隔立会という中間

録画ではなく、その場で映像をつないで立ち会う方法もあります。こちらは録画より確認できる範囲が広がります。

理由は、指示ができることです。「そこをもう一度」「計器を寄って」「反対側から」と言えれば、見たい部分を見られます。録画では撮影者が選んだ画角しか残りません。

ただし条件があります。工場内の通信環境、カメラを持つ人の技量、そして時間です。数時間の試験を通してつなぐのは双方に負担なので、重要な工程だけ時間を決めてつなぐ形が現実的です。

時差も設計に入れます。日本と韓国の時差はほとんどないため、相手の就業時間内に合わせるのは容易です。これは欧州や北米の企業に比べて明らかな利点で、遠隔立会が現実的に機能する条件の一つになっています。午前の試験に合わせてつなぐ、といった段取りが無理なく組めます。

第三者に依頼する

検査機関に立会を委託する方法もあります。費用はかかりますが、現地に人がいる状態になります。

特徴を理解しておく必要があります。第三者は渡した書類に対して検査します。指示書に書かれていないことは見ません。自社の技術者なら気づく「仕様には書いていないが気になる点」は、報告に上がらないのが通常です。

したがって、依頼するなら指示書の質が結果を決めます。何を、どの基準で、どう記録するか。この指示書は、遠隔立会のときの撮影指示と内容がほぼ重なります。

撮影の可否そのものも先に確認します。工場によっては撮影が制限されており、当日に断られることがあります。他社の製品が写り込む、工程を外に出せない、といった事情です。検査の日程を決める時点で撮影の許可を取っておくと、現場で方針転換をせずに済みます。許可の範囲も聞いておきます。

記録の形を決めておきます

どの方法を選んでも、後に残るのは記録です。記録の形が決まっていないと、後から見返せません。

必要なのは、検査した品の識別、実施日、方法と条件、使用機器と校正状態、測定値、判定基準、そして判定者です。これは立会に人を出す場合と同じ項目で、遠隔だから簡略でよいということはありません。

むしろ遠隔のほうが重要になります。その場にいた人の記憶で補えないためです。書類に書かれていないことは、存在しなかったことになります。

合格の扱いを先に決めます

遠隔で確認した場合、合格の意味をどう扱うかを決めておきます。ここが曖昧だと、後で問題が出たときに揉めます。

決めておく点は二つです。遠隔立会をもって工場検査の合格とするか、それとも着荷後の確認までを条件とするか。後者なら、着荷後に何を確認し、そこで不適合が出た場合にどう扱うかも決めます。

この取り決めがないまま遠隔で「合格」と伝えると、着荷後に見つかった問題は輸送中の話にされます。実際にどちらか分からない場合が多く、その議論に時間が取られます。

行かない判断も含めて

三つ目の選択肢は、立会をしないことです。これは怠慢ではなく、品目によっては合理的な判断です。

基準になるのは、不適合が出たときの影響です。設備を止める部品、やり直しが効かない大型品、規格で検査が求められるもの。これらは立会の価値が高くなります。逆に、代わりがすぐ手に入る汎用品では、立会の費用が見合わないことがあります。

この判断を品目ごとに一度決めておけば、案件のたびに悩まずに済みます。そして決めた基準を相手にも伝えておくと、相手側も検査の準備を計画できます。

全部見たのに見落とす場合

遠隔の限界として同一性を挙げましたが、実は人が行っても同じ問題が残ることがあります。

立会で確認した個体と、出荷された個体が違う場合です。悪意による取り違えは稀で、たいていは複数の同型品が並んでいて梱包時に入れ替わります。立会では合格品を見ており、記録も正しく、届いたものだけが別、という形になります。

これを防ぐのは立会の丁寧さではなく、個体識別と梱包記録です。検査した個体の製造番号を記録し、梱包時にその番号を写真で残してもらう。二つの番号が一致すれば、人が行ったかどうかに関わらず同一性は示せます。逆に番号を取っていなければ、何日立ち会っても後から証明できません。品目と検査項目をお知らせいただければ、どこまで遠隔で代替できるかについて見解をお返しします — 調達のご相談。発注時の検査指定は注文書の項目と合わせて決めておくと抜けません。